小説「変身」フランツ・カフカ著 感想
変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1)
- 作者: カフカ,丘沢静也
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フランツ・カフカ著「変身」
ある朝起きたら虫になっていた男の話。20世紀初頭に書かれた不条理文学の古典。
だいぶ前、NHK Eテレ「100分de名著」で紹介されていたので、テキスト本と合わせて読んでみた。
この小説の読み方は大きく分けて二通り。
1.虫になってしまった男のドタバタ悲喜劇として単純に楽しむ。
2.「虫になること」は何か現実的な出来事の象徴であると考えて深読みする。
当然「100分de名著」では、深読みした意味を1つの解釈として提示してくれていた。
それは、「虫になること」=「仕事に追われ、家族を養わなくてはいけいないプレッシャーに押しつぶされて、引きこもり・鬱になるということ」という解釈。
「100分de名著」番組司会の伊集院光氏は、高校時代不登校で中退、芸能人になってからも週一ラジオパーソナリティなのにラジオ局に出社拒否になった経験があるため、引きこもりの人の気持ちが良く分かるらしく、そのことをラジオで語っていた。
彼曰く、小説における主人公の心境・周囲の人の接し方に関する描写は、引きこもりを経験したことのある人にとっては「あるある」であり、「カフカの野郎、俺の姿を見てやがったな」とまで感じたらしい。
http://numbers2007.blog123.fc2.com/blog-entry-1887.html
この小説を読んでも、どうやったら引きこもり・鬱にならずに済むのかとか、周囲はどう接すれば良いのか、みたいな解決策があるわけじゃないのだけど、そういうふうになってしまった人の気持ちを、周りの人が理解してあげる材料の一つくらいにはなるのかもしれない。
あと、テキスト本に書かれていたもう一つの解釈は「重病人の介護」というもの。
小説のラストは、主人公が虫のまま死んでお手伝いさんにゴミとして捨てられた後、以前は主人公に頼りきりだった家族(父・母・妹)が自立して晴れやかな心境になるという、残酷な終わり方なのだけど、これって長年介護していた家族が亡くなった時の心境に確かに似てる。
この小説が優れているところがあるとしたら、そうやって読み手がいろいろ解釈できるところにあるのだと思う。