エッセイ「僕は自分が見たことしか信じない文庫改訂版」内田篤人著 感想
- 作者: 内田篤人
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2013/06/11
- メディア: 文庫
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サッカー日本代表の右サイドバックで、ルックスの良さから女性人気の高い内田篤人選手のエッセイ本。成長過程の20代青年が、等身大の話し言葉を交えて書いたものであり、文章は普通の若者っぽい。
ただ、サッカーで自分を成長させることについてはとても真面目。TVで見る限りクールでぶっきら棒そうな彼だが、自分の力をつけるためにJリーグで一番レベルの高い鹿島アントラーズへ入団したり、日本のレベルに満足できずドイツブンデスリーガへ移籍して厳しい環境で戦ったり、高い目標とそれに向けての努力を怠らない、ストイックなアスリートなのだということが分かった。ぶっきら棒に見えるのは、目立つことや自分の考えを人に伝えるのが好きではなくて、サッカー選手は試合の結果だけで評価してもらうべきだと考えているかららしい。
本田圭祐選手が「有言実行」で自分にプレッシャーをわざと与えて強くなろうとしているのに対し、内田篤人選手は「不言実行」。一般社会でもどちらかと言えば「有言実行」の方が目立つし優秀そうに思えるけど、みんながそんなアピール人間ばかりだと疲れるし、本人もつぶれちゃうのだと思う。
彼なりの人生観・目標達成のために心がけていること等も書かれており、興味深かった。(長谷部選手「心を整える」に比べたら、かなり面倒臭がりで自分中心の考え方か多いけど)
印象に残ったのは、南アフリカW杯本大会で岡田監督に起用してもらえず、ずっとベンチだったことが納得いかず悔しかったというエピソード。出場させてもらえない理由をあれこれ考え、岡田監督に直接聴きに行こうかとも思ったらしい。でも、意地を張って「絶対に聞かねぇよ」という態度を貫く。
そしてW杯後、自分なりにいろいろな問題点を洗い出して、それを全て克服しようとドイツへ渡って努力した結果、世界に通用するサイドバックになることができた。もし岡田監督に直接問題点を聴いていて、それが1つだけ(あるシチュエーションにおける守備力とかだけ)だったらその問題点だけを克服すれば良いと思っていたはず。結果的に、岡田監督に聴きに行かなかったことがプラスに働いたし、今後も聴かないことにするらしい。
ビジネスマンには「報告・連絡・相談」が大事と言われる。「報告・連絡」が大事なのは分かる。でも、課題があった時にたいして考えもせずすぐ上司に「相談」することがホントに正しいのか。短期的に仕事を効率良くやるのであればそれで良いけど、長期的にはギリギリまで「相談」せず自力で何とかしようとして失敗を経験した方が最終的に成長できるという場合もあるでは、と僕もずっと思っていた。
- 他人に頼らず自力でやりぬこうとするプライド
- 高い目標に向かって努力する向上心
- 課題をたくさん洗い出す想像力
が大事なのだと思う。サッカーも普通の仕事も。
内田選手の頑固さ・不器用さ・人間くささ等、ルックス以外の彼の魅力的なところが良く分かるエッセイだった。