小説「太陽の坐る場所」感想

太陽の坐る場所 (文春文庫)

太陽の坐る場所 (文春文庫)

 高校卒業から10年の同級生男女グループ。彼らが、卒業後 人気女優になった女子を同窓会に参加させようと画策するんだけど、それぞれ思惑があって、、、という話。

 全5章、章ごとに主人公が変わり、徐々に彼らがそれぞれ高校時代から抱えていた悩み・妬みの感情や、当時の出来事の真相が明らかになっていく。若者同士の傷つけ合い・すれ違い・葛藤などを描いた青春小説(ミステリ要素もあり)。

 

感想1:青春小説として

 各章の主人公はそれぞれコンプレックスを持っていて、表面上は仲良くしていても誰か他メンバーに嫉妬し、でもそのメンバーはまた他の誰かに嫉妬し、、、という複雑な人間関係。人間(特に女性)の持つ醜い一面(劣等感・優越感・虚栄心)から来る複雑な感情をとてもリアルに描いていると思う。

  各章主人公は、

  • 劣等感を感じているのに、それを悟られないように羨ましくないという演技ばかりうまくなってしまう子
  • 容姿に自信がなく、自分は異性から恋愛対象になっていないと諦め、分不相応な憧れを抱かないようにと自己防衛している子
  • 自分がチヤホヤされるために、罪悪感なしで他の子を貶めたり嘘ついたりする子

  印象に残ったセリフ

『一番嬉しいのは、褒められること。二番目は、妬まれること。』 

 

 他者からどう見られるかなんて気にせずに生きられればいいのだけど、自分の中身に自信が無くて、友人関係以外に頼るものがない高校時代だったら、そういう風になってしまうのかもしれない。どんな分野のことでもいいから「自己肯定感」を持つことが大事なのだろう。

 

感想2:ミステリ小説として

 謎の中心となる女子2人に関するトリックは、先に映画の配役を見て知ってしまったので半分ネタバレ状態で読んでしまった。それでも、高校時代の出来事はそういう意味だったのかと思わせる謎解決部分は、良く出来ているなと感じた。

 水川あさみ木村文乃で映画化されるのだけど、この小説のトリックはどうやって映像にするんでしょうね。と言うか、ネットニュースの映画紹介でネタバレ全開ですね。ミステリ要素少なくして、青春ドラマとしてやるんでしょうか。