小説「桐島、部活やめるってよ」感想

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

 

あらすじ

高校生の青春小説。男子バレー部キャプテン桐島の退部という事件を中心に、周辺の男子女子5人に起こる出来事を描いた短編5本+番外編1本。

感想

各章で描かれているのは、運動部のレギュラー争い、憧れの男子への片思い、義理の母娘の関係など、昔ながらのテーマもいいんだけど、この小説で秀逸なのは、クラス内で自然発生する上下関係「スクールカースト」を、上と下 両方の立場で描いた2つの章「前田涼也」と「菊池宏樹」だと思う。

クラスの中で「下」の立場の少年「前田涼也」は、アメトーークの「中学の時イケてないグループに属していた芸人」そのもの。
女子と会話する勇気が無く、体育授業のサッカーではボールが来ないよう願い、学生服は学校指定と寸分違わぬものを着用。
お互い目立たない似た者同士の仲間で集い、一般人には理解不能なサブカルチャーの話題で盛り上がり、流行りものには興味がないフリをする。
実にイケてない。

でも実は、スポーツ万能で外見がカッコいい「モテ男子グループ」所属の「上」の立場の少年「菊池宏樹」も、薄っぺらい人間関係や、何に対しても熱中することができない自分に虚無感を感じていて、映画という趣味に没頭する「下」の立場の少年「前田涼也」をまぶしく感じている。

僕が高校生だった20年前と比べ、クラス内上下のグループ分けは明確化・固定化し、イケてない男子には実に生きづらい時代になっているということが良く分かった。
でも、この小説のように、上と下それぞれがお互いを理解しようとする関係が現実でも作れれば、少しは楽になるかも。
今苦しんでいる高校生に読んで欲しい。