小説ふくわらい」感想

ふくわらい

ふくわらい


鳴木戸定(ナルキドサダ)という、一般人とは違う感性を持った女性編集者の話。

どんな風に感性が違うかというと、
・普通の人の感情が理解できずロボットのような言動をする。
・ふくらわいのように人の顔のパーツを頭の中で移動させる性癖がある。
・出版社ビル屋上で呪文を唱えて雨乞いをする。
みたいなこと。
それだけだと、まあ変わった人だねで済むのかもしれないけど、この小説の主人公が一線を越えているのは、「人肉食」経験があるということ。

読者には、ここに拒絶反応を起こす人が多そうなのだけど、たぶんこれって著者からの「価値観の違いを許容できるか」「想像力をどれだけ働かせることができるか」という挑戦状なのでなないかと思う。
安易に理解・許容する事はできないし、許容できる人もどうかと思うのだけど。

そして、この小説で賛否両論なのはラストシーン。
変人主人公にフツーの友人ができて世の中に折り合いを付けられるようになったかと思ったら、それを突き放すような衝撃の終わり方。

またこれも、西加奈子さんからの挑戦状なんだと思う。
正直まだ僕には付いて行けそうもないし、これを面白いと言い切ることもできないのだけど、これも一つの小説の醍醐味なのかなぁとも思わなくもない。
日常とは全然違う世界を見せてくれるという意味で。