小説「火花」感想

火花

火花

著者は、読書好きで有名なお笑い芸人ピースの又吉直樹

内容は、売れない漫才師ボケ担当の青年と、先輩芸人(こっちもあまり売れていない)との交流を描いた作品。


又吉くん自身の話というわけではなく、主人公は若手芸人すべての代表みたいな、お笑いにとんがってて「自分のお笑いこそが一番だ」みたいな意識の強い、でも人間関係が苦手で、一般のサラリーマン生活はできないであろう青年。

彼とその先輩芸人が、お笑いを追求する方向性が異常であればある程、お笑い芸人のバカバカしさと同時に、夢中になれる物があることの素晴らしさや、自分を犠牲にして視聴者の心を救ってくれる「お笑い」という分野の尊さみたいなもの、を感じさせてくれるのだと思う。
ラストの「笑い」と「悲しさ」の両方の感情を与えてくれるエピソードも、お笑い芸人ならではで素晴らしい。

 

小説の中の会話で頻繁に出てくる「ボケ」には、あんまり笑えないものもあるかもしれないけど、お笑い芸人もTVや舞台以外では未完成なボケをしたりするという意味で、それもまたリアルなんじゃないだろうか。

 

読んだ人みんながそう感じるかどうかは自信を持てないけど、僕のように、「アメトーーク」みたいな芸人同士関係性・芸人自身の人間性を面白いと感じ、「IPPONグランプリ」等の大喜利番組でのお笑い芸人の頭の回転の速さ・想像力に感心し彼らをリスペクトしている人間には、強く共感を与える小説だと思う。
もしそういう人がいたら、140ページくらいですぐ読めるので、普段本をあまり読まない人にもお勧めします。