小説「さくら」感想

さくら (小学館文庫)

さくら (小学館文庫)

最近TVでよく見る西加奈子さん。
トークがとても面白くチャーミングな人だな、と思ったので、著者に興味を持って読んでみた。

ストーリーは、ある幸せな一家(両親+3人兄弟+犬)の話。
前半は、ほのぼのとした小さな出来事が淡々と続き、後半突然、一家に不幸な事件が起こる、という物語。
特に、奇想天外な話でもなく、伏線も謎解きも無い。

読んで感じたのは、文章から感じる著者の感受性の強さというか、独特な感性みたいなもの。
人間の純粋さや幸せを感じる描写がある一方で、人の心の残酷さを描いた描写がたくさん出てきて、読む人はどれか一つか二つくらいは心当たりがあって、チクチクするのではないだろうか。

印象に残ったシーンの一つ
・主人公が、小学生の頃に好きだった女の子に中学生になって再会したら、彼女が顔中ニキビだらけになっていて、恋心が一気に醒めてしまうのだけど、そんな自分が許せないと感じ自己嫌悪するところ。

そういう、何とも言えない感情をいろいろ味わえる小説だった。