歴史小説「永遠のゼロ」感想
あらすじ
主人公は、大東亜戦争時のゼロ戦搭乗員の男と、現代に生きるその孫の青年。
終戦間際、なぜ「臆病者」と呼ばれても妻子のために生き残りたいと願っていた祖父が、特攻隊員として死ななくてはならなかったのか?
ただ何となく現代に生きているニート青年とその姉が、戦争当時の祖父の同僚や教え子の話を聴いて祖父の足跡をたどることで、当時の人々が懸命に生きていて、それにも関わらず望まない形で命を落とさなくてはならなかったことを知る。
そして、物語の最後、祖父が最期に残したものを知ることで、自分達も今の時代を懸命に生きねば、と感じ成長していく、という話。
- 作者: 百田尚樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/07/15
- メディア: 文庫
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感想
物語の大きなネタバレとなる「祖父は何のために死んだのか」という謎解き部分を除くと、以下の2つの読み方ができると思うので、それぞれの感想を書く。
1.戦記物として
1941年12月(真珠湾)~1945年8月(終戦)までの各戦闘の起こった流れと結果を通しで読み、知識を付けることができる。
ただ、取材対象となるおじいさん達の昔話(何度も話が横道にそれる)が長くて細か過ぎるため、大東亜戦争の経緯や戦闘機・戦艦についての前提知識が無いと、読むのが少し辛い。
特に自分としては、戦闘機の空戦が三次元の戦いであるため、文章ではイメージが分かりづらかった。
情報を補完するために、昔の戦記映画を観てみたいと思った。
2.先の大戦全体をどう捉えるべきか、という一つの考え方として
この小説で一番言いたいことは、以下のことだと思う。ほぼ共感。
戦争を美化する「靖国史観」でもなく、戦争に関わった当時の日本人全てを否定する「自虐史観」でもない。
戦争についても是々非々で、良かったことと悪かったことをきちんと整理していかなくてはいけない。
もちろん戦争は出来ればやらない方がいいんだけど、国を守るために戦場で命を懸けて戦った人たちには、尊敬と感謝の気持ちを持つべき。
特に、特攻隊員の人達は、みんなが本心から志願したはずはないのだけど、最期の手紙には穏やかな心境で「死を恐れずに国家のために殉ずる」と書かれている物が多い。
とても20歳前後の青年に出来ることではない。
翻って現代、当時の人達に恥ずかしくない社会になっているだろうか。
『戦後の民主主義と繁栄が、日本人から「道徳」を奪った。今、街には、自分さえよければいいという人間たちが溢れている。六十年前はそうではなかった。』
取材対象のおじいさんの一人が言ったこの言葉。戦争のことを知らないと、年寄りの愚痴のように思ってしまうけど、いろんな話を聴いた後だと、もっと子供たちにきちんと日本の歴史や美徳を伝えて、より良い国になってほしいと強く思う。
なお、戦争の反省すべき点(主に、軍上層部や政治家の「戦略不在」「組織間連携不足」「環境変化への対応遅れ」等)については、次に読む書籍「超入門 失敗の本質」鈴木博毅著 でより深く勉強する予定。