ノンフィクション「ゼロからトースターを作ってみた」感想

ゼロからトースターを作ってみた

ゼロからトースターを作ってみた

この前読んだ「ノンフィクションはこれを読め! 2013 - HONZが選んだ110冊」でレビューされていた本。

手軽く読め笑えて、且つ、メッセージ性のある内容っぽかったので読んでみた。

 

概要

英国の大学生が実際に卒業制作で「ゼロから」トースターを作った奮闘記。

ここで言う「ゼロから」とは、原材料の鉄・プラスチック・銅・ニッケルなどを、原産地(鉱山など)から掘って、精製・加工した後に組み立てて作るということ。

自家製の溶鉱炉で鉄鉱石から不純物を取り除き鋼を製錬しようとしたり、銅山周辺の池から採取したミネラルウォーターを銅を電気分解したり、ジャガイモのでんぷんからプラスチックを造ろうとしたり、化学知識を総動員して試行錯誤、悪戦苦闘。

時には、失敗したり、最初のルール解釈を変えるズル(?)したり。バカバカしくも感動的な物語。

 

感じたこと

著者が、近所のお店で買えば1000円程度のトースターを、約15万円(作成期間9か月間・移動距離3060キロ)かけて作ることを通して学んだのは以下のようなこと。

世の中に出回っている大量生産の商品が、いかに高度な技術の積み重ねで出来ているか

商品の値段には含まれていないもの(空気や川の汚染、製造過程で出来る廃棄物、リサイクルのためのコスト)が実はあるんだということ

富とは相対的なものであり、周りの人が持っているものを自分が持っていないと「貧しさ」を感じる。そのため、豊かさを追及していたらキリがない

この本を読むことで、読者もそれらを笑いながら追体験できる、メッセージ性のある本だった。

日本でも、TVの深夜バラエティー番組とかで、お笑い芸人にやってもらったら楽しいかも。

 

そして、著者が最初にこの挑戦におけるルールを決めるときに悩んだのは、「ゼロから」という言葉の定義。

移動には交通手段が必要だし、電気やドリルなどの道具なしには加工もできない。本当に「ゼロから」何かを作ることなんて不可能なのだ。

 

「一からアップルパイを作ろうとしたら、まずは宇宙を想像しなくてはならない」

 

という有名な言葉があるらしい。そんなことも気づかせてくれた。