映画「風立ちぬ」感想

昨年観た映画「風立ちぬ」感想

本作品のテーマとして感じた「ものづくりの尊さ」「夫婦愛」「日本人の戦争観」の3点について書く。

1.ものづくりの尊さ

一番感じたのは、創造的なものづくりの仕事をする人達に対する尊敬。

主人公堀越二郎は、子供のころから飛行機に憧れて飛行機の設計士を目指す。美しい飛行機を飛ばしたいという気持ち、その気持ちに突き動かされて仕事に没頭し他のことに無頓着になるところ、そういう純粋さに対する尊敬を一貫して感じた。

そして、その仕事の成果物である飛行機の用途が戦争の道具となり、敗戦によりその成果物の「結果」が否定されても、ものづくりの仕事の「過程」まで否定されるべきではないということが、宮崎駿監督の伝えたかったことのように思う。

 

2.夫婦愛

主人公堀越二郎は、基本的には優しいんだけど、飛行機作り一筋で他人に興味ない男。妻菜穂子への愛情も、仕事に没頭する合間の一時の安らぎでしかないように見える。

病気の妻と一緒に住むのも、去られた後に追わないのも、妻の「命を長らえるよりも、夫に美しい容姿の自分を目に焼き付けてもらいたい」という意思を尊重したという面もあるけど、仕事が最優先だからなのだろう。

そして、映画ではっきりと描かれていない菜穂子の最期のことを想像すると、とても残酷なことのように思うのだけど、これもあの時代の夫婦愛の一つのかたちなのだろう。

 

3.日本人の戦争観

宮崎駿監督個人の「戦闘機はカッコいい」でも「戦争は嫌だ」という相反する感情は、日本人全体の持つ病気みたいなもの。人間は完全ではないのだから、矛盾する感情があってもいいんだということをあらためて言ってくれたのだと思う。

そして、堀越二郎の作ったゼロ戦は、戦争初期はその攻撃力の高さから満州東南アジアで日本軍優勢の原動力となったが、中盤以降アメリカの技術や戦闘方法の革新に追い越され、多くの日本の優秀な若者を死に導いていくことになる。本作品でその悲劇をきちんと描いていない点は賛否あるようだが、僕は子供も見るアニメ映画なのでそれで良いと思った。

もしもっと知りたければ、他の戦争を描いた作品(「永遠のゼロ」とか)を観ればいい。戦争を舞台にした作品はそれ1本で完結するものではなく、他作品と合わせて観て、様々な立場・視点・思想を知るきっかけにしていくという効用もあるのだと思うから。