ビジネス書「ワークシフト」感想

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

 

概要


イギリスのビジネス思想家による「2025年に世界の人たちの働き方がどうなっているか」予測。
テクノロジーの進化、グローバル化、人口構成の変化・長寿化、エネルギー・環境問題の深刻化などの要因から、もし政府・企業が今のまま何の対策も取らず、働く側の意識も変わらなかった場合、以下のような暗い未来になってしまうという事例をまず示している。

  • 世界各国のパートナーと仕事しているビジネスマンの例では、オフィスだけでなく、夜や朝自宅でも、世界中のメンバーと会議や指示をし続け、休む暇がない。仕事とプライベートの境界が全く無い状態。また、時間が細切れになり、集中して思考・学習できない。
  • 個人契約のプログラマーの例では、1日中自宅の中で仕事をし、生身の人間には誰にも会わない。同僚や顧客とのコミュニケーションというものが全く無い状態。家族とも離れて暮らしており孤独。


上記のような暗い未来になるのを出来るだけ避けるため、著者は3つの働き方に関するシフトを提案している。

1.キャリア形成
  • 「広く浅く」でなく、1つだけの分野のスペシャリストでもなく、専門分野を複数持つべき(ゼネラリスト → 連続スペシャリスト)。

  • 精力的に仕事に打ち込む期間と、長期休業して学業やボランティア活動に専念する期間、家庭を優先する期間を交互に経験する「カリヨンツリー型キャリア」を推奨。

 

2.人的ネットワーク
  • 仕事をパフォーマンス高くやりつつ、プライベートも充実させるため、以下の3種類の人的ネットワークが必要。

(1)ポッセ…お互いに信頼し合い、いざというときに頼りになる少人数の同士。
(2)ビッグアイデアクラウド…ネットで繋がる比較的軽い関係の友人で、質問に対して様々な視点のアイデアをくれる存在。多数でいろんな分野の人がいることが望ましい。
(3)自己再生のコミュニティ…リアルな関係でプライベートを共有する友人・家族

3.ワークライフバランス
  • 収入やキャリア追求のペースを落としても、プライベートの充実や社会貢献活動を重視するというライフスタイルも、選択肢として尊重する社会や企業であるべき。

  • 大量消費より経験。

感想

イギリス人が書いた本だが、内容は日本にも当てはまる事ばかり。今のまま高齢化やグローバル化が進めば、日本などの先進国で働く人には暗い未来が訪れることになる。そうならないため、どんな働き方を目指すべきかということを提案している。
中には、本当にこんな世界になるの?とか、こんな働き方するのは一部の人達だけじゃないの?と疑問に思うこともある。いくつかの例。

  • ガソリン・電力等エネルギーコストが高騰するため、会社員は出社せず、近所の共有スペース(オフィスハブ)で、TV電話しながら仕事するようになる。TV会議のアポイントメントは人工知能秘書が関係者の秘書と連携して予定表を作ってくれる。また、人の長距離移動はコストが高いため、車・飛行機を使うことは、はばかられるようになる。
  • 企業に勤めずフリーで、働きたい時に働き休みたい時に休む、というスタイルが当たり前になる。また、仕事を辞めてボランティア・NPO活動したり、大学に通ったりした後、また別の企業に就職する、ということも、当たり前になる。


あと、もしこのような未来になっていくとして、縮小せざるを得ない現行の大企業(自動車・航空・鉄道・エネルギー関連企業)で働く人達はどうなっちゃうの?とか、世の中の会社員がみんな会社よりプライベートやボランティア活動を優先するようになったらさすがに企業が困るんじゃないの?とか思ってしまう。

でも、この本の趣旨は、今のままだと暗い未来になりますよという警鐘を鳴らした上で、そうならないための目指すべき方向性までは示した、ということであり、具体的にどう産業構造・制度・社会風土に変えていくのかをこれからみんなで考えないといけないですよ、ということなのだと思う。
そういった議論が、これからマスコミでも出てくるだろう。その際の一つの元ネタとして有効な本だと思う。

それ以外で、自分の心に残った箇所

  • 創造性を発揮するため、仕事と趣味の境界線は曖昧な方が良い。遊び心が無いとクリエイティブな仕事は出来ない。
  • 転職によるキャリア脱皮を成功させるためのコツは、副業などで試行して段階的に仕事を変えていくこと、他の企業・専門分野の人たちとの人的交流を持つこと。