小説「下町ロケット」感想

下町ロケット (小学館文庫)

下町ロケット (小学館文庫)

 

 ロケット打ち上げに失敗した元研究者が挫折し、町工場の社長になっても「自分が作ったロケットを打ち上げたい」という夢を持ち続け、特許訴訟や大企業との品質勝負などの試練を克服して夢を叶えるサクセスストーリー。

 

 銀行からの融資停止等、もうダメかもしれないというピンチが何度も訪れつつも、町工場の持つ最先端技術や従業員のチームワーク・有能な弁護士の戦術などで切り抜ける。そして、従業員の要望する「目先の利益」よりも「コア技術の自社所有・将来の成長の可能性」を選択する主人公の信念。見方を変えたらワンマン社長のワガママで、社員を振り回すことになるのかもしれないけど、そこはエンタメ小説。なんやかんやでうまく乗り切る。

 ちょっとうまく行き過ぎなんじゃあ、という気もするけど、とても爽快で気分の良くなる話だった。僕も、社員みんなで仕事がうまくいく瞬間を見守って、一緒にバンザイするような会社組織に憧れる。

 

心に残った主人公のセリフ

「仕事っていうのは二階建ての家みたいなもんだと思う。一階部分は飯を食うためだ。必要な金を稼ぎ生活していくために働く。だけどそれだけじゃあ窮屈だ。だから仕事には夢がなきゃならないと思う。それが二階部分だ。夢だけ追っかけても飯は食っていけないし、飯だけ食えても夢がなきゃつまらない。」

 

 仕事の中で夢を持つことは、全体の利益を優先せず自己中心的になることで、現実にはなかなか難しい。でも、それを持ち続けている人とあきらめた人、5年後10年後には何らかの差が出てるんだと思う。