エッセイ「少女と傷とあっためミルク」春名風花 感想
- 作者: 春名風花(はるかぜちゃん)
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2014/10/24
- メディア: 単行本
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子役タレントはるかぜちゃんこと春名風花ちゃん(13歳)の、ブログ・Twitterの文章をまとめたエッセイ。
彼女は、9歳からTwitterを始め、子どもとネットの関わり方や、いじめ問題などについて、自分の考えをネットで発信し続けている。
僕が彼女の発言に注目し始めたのは、2012年の朝日新聞の記事「いじめている君へ」の頃から。
http://www.asahi.com/special/ijime/TKY201208160557.html
いじめられる側を慰めるでもなく、いじめている側を怒り糾弾するでもない。
いじめている側の想像力の無さを憐み、その行為の醜さに気付いてほしいと願う文章に共感した。
その他の発言も、子供の目から感じた、子供の自主性を大事にしてほしいという主張や、純粋で鋭い目線での大人批判が多く、とても興味深い。
以下、彼女の主張で共感したもの。
・性描写や残酷なシーンのある漫画を規制しようとする都条例に対して
「もしぼくたち子どもから、いっさいの汚いものや怖いものを隠してしまうと、ぼくたちは本当に人を傷つけないとわからなかったり、傷つけてしまってもその大きさがわからなかったりする大人になるかもしれないと思う。きれいなものや笑えるものだけみせて育てた子どもが、人にやさしい大人になるとは、ぼくは思いません」
「ぼくたちはいいまんがも、悪いまんがも、ちゃんと自分でえらべます」
「都条例ぷんすか(ω)」
・ネットいじめについて
ネットでいじめが多いんじゃなくて、ただ、みんなが今まで見ようとしなかったもの、目を背けていたものが「見えている」だけ。
「インターネットが危険」なんじゃない。インターネットが、世間にあふれる危険を可視化しただけだよ。
・性同一性障害や障がいに対する差別について
「一人ひとり性格も、好きなものや得意なことも、嫌いなものや苦手なものも、できることや身体のしくみも違うんだよ」
「自分と違う他人の特徴を、お互いに理解して、みんなで仲良くできればいいね」
と、何人の大人が言えるかできっと、世界は変わると思うんだ。
・ネット炎上やダメ出しばかりの世の中について
ダメ出しをするだけだと、単なる悪口や無責任な批判で終わってしまうけれど、何か納得いかないことがあるときはまず、指摘するとともに自分がひとつポジティブな解決策を提案(ポジ出し)することで、みんなで解決策を考えていくことができて、ちゃんとした問題提起にすることができるんだよね。
・子供らしく振る舞うことについて
子どもが人目を意識して子ども"らしく"したなら、それはもう子どもじゃない、不気味なもの。
彼女は、ネットでの誹謗中傷に傷つき、何度かTwitterを休止したりしてもしていたようだけど、より耐性が強くなって復活し、また発信を続けている。
なぜそうまでしてネットでの発信を続けるのか?
彼女は、ネットでの「匿名で誹謗中傷される残酷さ」以上に、「リアルの暮らしでは会うことのできなかったであろう多くの人達から受ける善意・優しさ」に救われるていると感じることの方が多いらしい。
そして、彼女が今は以前より楽な気持ちでネットで発言できているのは、「分かりあえない人の存在を認める」ことを覚えたからとのこと。
世界中の争ってばかりの大人たちに、13歳にしてこの境地に達した彼女の言葉を聞かせてやりたい。
彼女が大人になったら、政治家・評論家・作家・教育者などになって、世の中を変える人間になって欲しい。