小説「車輪の下で」感想

車輪の下で (光文社古典新訳文庫)

車輪の下で (光文社古典新訳文庫)

 

 舞台は20世紀初頭ドイツ南部。

 主人公は、田舎の村で優秀で、周囲から期待されていた少年。

 遊びや友達付き合いを我慢して勉学に打ち込みエリート学校へ入学したのだけど、成績が落ち精神を病んで退学し、田舎に戻って機械工になって、、、という少年の挫折を描いた古典小説。

 著者のヘルマン・ヘッセが彼自身の少年時代のことを書いた自伝的小説でもあるらしい。

 たしかに、少年が不幸になった根本原因は、親や教師や社会のせいだ、みたいな恨みつらみが全編通じて詰まっているように感じた。

 ヘッセがこの小説を書いたのは20代。

 彼は退学して機械工をした後、作家という別の道を見つけることが出来たけど、まだ少年時代の辛い気持ちを忘れてなかったんだと思う。

 正直、読んでいてそんなに面白い小説ではない。

 今回始めて読んだけど、僕が学生の頃に読んでも、可哀そうだなということ以外に何も感じなかったと思う。

 でも今、40歳で親になって読んで思うのは、子供に過剰な期待をして親の決めた人生を歩ませようとしても、幸せになれないんだろうなということ。

 とはいえ一方で、子供の自主性に任せているだけでは、必要最低限の勉強もしないんで、そのさじ加減が難しいのだけど。

ちなみに、タイトルの「車輪の下で」(Unterm Rad)は、ドイツ語の「車輪の下敷きになる」という言葉が「落ちぶれる」という意味であることと、主人公が機械工になってやすりみがきする歯車(Rad)とを掛けているらしい。