実用書「統計学が最強の学問である」感想

統計学が最強の学問である

統計学が最強の学問である

概要

 政府やマスコミが大衆を操作しようとして発表する数値や、身近な詐欺的行為に騙されないようにするためには、統計リテラシーが最も重要である、という主張で、大学教授が統計学の体系・歴史的背景等について書いた本。

 感想

 統計学とは、ビッグデータを高性能コンピュータで総当り的に高速計算させて答えを導き出すことをいうのではない。膨大なデータをいかに効率よくサンプリングして(手抜きして)情報を分析して誤差を最小限まで小さくし、投資対効果のメリットのある対策を見つけ出す技術のことだということが、良く分かった。例えば、マーケティング調査では、調査対象が1万人の場合誤差が0.9%、2万人の場合は0.6%だったとして、0.3%の精度を上げるためにコストをかけて調査対象を増やすべきかどうか、といった議論が事前に出来るようになる。

 こういった知識は、もしかしたら自分の仕事(システムエンジニア)でも使えるんじゃないかという気がするので、勉強したいと思っていた。とはいえ、この本だけでは、回帰分析・カイ二乗検定など、言葉と用途は出てくるが、詳細な内容説明は無いので、読んだらすぐに実用できるわけではない。次は、実際の数式で勉強する本を読み、またこの本のポイントを読み返すことで、実用知識として身に付けたい。

 統計学だけでは簡単に答えの出ないこともある例として、暴力的ゲームと少年犯罪の因果関係というのがあげられて興味深かった。普通の子が暴力的ゲームに影響されて犯罪を犯すのか、もともと暴力的な性格の子が暴力的ゲームを好むのか、どちらが先なのか調べようがない。また、アンケート対象の親が、子供のやっているゲームを暴力的と感じるかどうか人それぞれであるし、もしかしたら、ゲームに対する理解が無く「そんな暴力的なゲームばっかりしちゃダメ!」とか言う怒りっぽい親の子が、遺伝的に犯罪しやすいのかもしれない。たしかに、考え出したら答えは一つじゃないかも。